「ウェブサイエンス入門」
最近読んだ.というわけではなく,ちょっとした宣伝なのかも.なぜなら,うちの先生の著書だから(笑)
ウェブサイエンス入門―インターネットの構造を解き明かす (コミュニケーションサイエンスシリーズ)
- 作者: 斉藤和巳,NTTコミュニケーション科学基礎研究所
- 出版社/メーカー: NTT出版
- 発売日: 2007/08/01
- メディア: 単行本
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せっかくなので,目次ものっけます.
はじめに 第1章 ウェブページの検索とランキング 第2章 ウェブネットワークの可視化 第3章 可視化によるウェブの分析事例 第4章 平均リンク数に基づく主要トピック抽出 | 第5章 ネットワーク構造とトピック抽出 5.1 シミュレーションによる評価 5.1.1 スモールワールド性 5.1.2 スケールフリー性 5.1.1 近傍結合モデル:CNN 5.2 コア抽出法の適用結果 5.3 実験結果の考察 column5.1 各種相関グラフの計算法の詳細 5.4 抽出したコア部の視覚評価 5.5 第5章のまとめ 第6章 多重トピック抽出とその応用 第7章 トピックに関する認知実験 第8章 ネットワーク成長の性質 おわりに |
この本は,内容的にはうちの先生のやったことのある研究が基になっていると思っています.なので,トピックは分散気味ですが,ウェブを研究するときに考えるだろう問題への取り組みが載っていて面白いです.キーワードとなってくるのは「ネットワーク」で,問題の背後にネットワークを意識していたり,ネットワーク(グラフ)の性質を利用して問題解決したりなど,ところどころでネットワークは出てきます.
ネットワークの本だと,増田先生や今野先生らの著書が結構あります.増田先生や今野先生の本に比べると,この本はだいぶ応用的な内容です.もし,ウェブサイエンスを勉強するなら,増田先生や今野先生の本を先に読んでから,この斉藤先生の本を読んでみるといいかも知れません.あと,海外の複雑ネットワークの世界で有名な方の本も,翻訳されてあります.僕が特にオススメなのは,「新ネットワーク思考―世界のしくみを読み解く」です.複雑ネットワークの歴史が網羅されてるといってもいいのかもしれません.直接的にこの本には関係ないかも知れませんが,知っとくと面白いかなと思います.
話を戻しまして・・・,ただ,この本で残念なのは,内容が概要的な感じになっていることです.入門書であることと,ページ数の制限などもあるので仕方ないことだと思うのですが・・・.ただ,もっと知りたいという方には,「おわりに」に先生のコメント付きで参考文献が出ているので,そちらを見ていただくのがいいのかなと.
あと,意外とウェブサイエンスってタイトルに付く本はないんですよね.発売当初もそうですけど,それから約3年経った今も,ウェブサイエンスとタイトルに付いた本は他にないと思います.雑誌の記事では,例えば日経サイエンス2009年1月号で「ウェブサイエンスの誕生」という記事がありますね.
まだまだ歴史が浅い分野だと思いますが,ウェブもかなり進化してきて,これから注目される分野だと思っています.例えば,一昔前までは,ウェブ上のネットワークはページ間のハイパーリンクでした.しかし,最近はTwitterやFacebook,日本ではMixiなどSNSの普及で,ページだけじゃなく,ウェブ上に人間間の繋がりが出来上がっています.昔から人間間には友人関係のネットワークが存在するという仮定で研究は進められてきましたが,実際のデータを得ることは困難でした.それが今,実際の繋がりをデータとして得ることが出来ます(まだまだ難しいところはありますが).こういった背景は,この研究の必要性を増してくれるんじゃないかなと勝手に思っています.